特定秘密保護法案について

 とうとう特定秘密保護法案が拙速な審議によって衆院を通過してしまった。半年以上前に、ブログに日本の再軍備化への懸念について書いたが、まさに現在その道を真っ直ぐに突き進んでいるように見える。今年に入ってから、日本が今後進むべき道を本質的に逸脱してしまわざるを得ない改憲論議が本格化した。しかし、目下の特定秘密保護法成立への道は、国民が知り得る情報を無制限に秘匿することが可能となる点で、改憲への道よりも一層直截的に戦争への道へと突き進むことが可能となることを意味しており、危険極まりないものだ。国民の身体に及び得る具体的な危険性を示す法案の問題点については、既にメディアで多く指摘されているので、ここでは立ち入らない。そのことよりも今ここで問題にしたいのは、この法案が修正を促されつつも、与党によりいともたやすく維持され、今国会の会期中の成立へ向けて推移していることの意味である。そもそも、現与党の最大勢力たる自民党には、その60年近い歴史の中で、この国の民主主義化への道を大きく阻害するようなさまざまな法案-今回の法案をめぐって言われている「知る権利」の非担保以外にも、さまざまな種類の国民の人権を脅かしかねない諸々の法案があった-の成立を慎重に避ける動きがその都度内在し、実際にそれらが作用していたものである。翻って今回の法案については、現首相は前回の在任中からその成立を模索しており、現在の在任中には成立させたいという強い意欲を持っているのに加え、党内での反対意見は少数でトーンも小さい。しかし、2年前には原発事故も経験し、国家の管理する情報の国民への公開がより一層求められるようになってきているはずである。加えて、法案成立に向けては、現在同時進行で審議されているNSC法案ともどもアメリカの要請があるにしても、決して「知る権利」の非担保まで併せて要請されているのではない。ここ数年の国内外の政治状況からは、この法案の維持と成立へ向けての推移の意味は説明出来ないように思われる。しかし、国内外どころでない、足元を見てみれば、現政権の直近の支持率はいまだ50%を維持しているという現状に気付く。結局のところ、この高いというべき支持率があるからこその現首相と現政権の強気が、法案の維持を促しているのだろうと考えざるを得ないのだ。

 以前ブログで、衆院選に際して、そして、参院選に際して、原発が最大の争点になるべきであると書いた。しかし、国民にはどうしても現在形の生活を第一に考える傾向が強いせいか、経済浮揚策に期待する票が多く投じられ、その結果の現在があるという状況だ。目下の特定秘密保護法案は、成立してしまえば、近い将来の日本における国民の基本的人権を必ずや脅かしかねないものであると同時に、70余年前の治安維持法下の日本と同様の軍国主義化を導きかねないものである。幸い、高いというべき現政権の直近の支持率下にあっても、7~8割の国民がこの法案に反対していると言われている。国民が声を上げないうちにいつの間にか軍国主義化と再軍備化が進んでしまうという事態を、大変懸念している。もしそういうことになれば、それは70余年前の歴史が繰り返されたということである。過去の歴史に学び、取り返しのつかない過ちを避ける為の危機感を持たなければならない。必要なのは、将来の国の在り方をどうするかという、数年先から数十年先、あるいは百年先といった時間軸での思考である。その意味で、例えば原発問題を考えるに際してと同様の思考が必要なのである。

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