民主主義の死のはじまりを防ぐ為に

 これが文明国で起こる出来事だろうか?もちろん、森友文書改竄問題のことである。専門家ですら、現政権下で繰り返されているあらゆる非民主主義的な政策や事件について、全てフォローするのは不可能なのであるから-例えば、升永英俊弁護士はそれゆえ「一票の格差問題」にのみ傾注していると明確に述べておられる一、ましてや専門家ではない一般市民が出来ることというのは限られている。当ブログにおいては、ウェブサイトの開設直後に起きた原発事故に焦点を当てて書き続けた後、この問題についてある程度の主張を伴う、内容のあるまとまった文章を書く必要性が減少したと判断してからは、現政権が進める再軍備化への道について主に書いてきた。今回の森友文書改竄問題は軍備・防衛問題とは直接的には関係は無い。しかし、再軍備化に関する諸政策や立法手続きが非民主主義的なやり方で進められてきたことと同様、今回のこの問題もまた、国民の共有財産であるはずの公文書が改竄されたという点で、全く非民主主義的な事象(やがて事件として立件化されるべき事象である)であると言える。

 私は1年少し前に、現在の自民党を支持することは政治的に間違いであると指摘した。戦争法の制定に始まり、南スーダン日報隠蔽問題等々、この国では現政権下で国民が置き去りとされる形で政治が営まれてきた。現政権以前であっても、自民党政権下においては、政財界と選出議員の地元選挙区に利益が誘導される形で政治が行われてきたのは歴然とした事実である。しかし現政権下においては、首相と政治的思想を共有する人物や個人的に親しい人物に便宜を図り、莫大な利権を享受させるという、民主主義そのものを破壊するような政策があけすけに行われてきたのが、決定的に異なる点である。今回の事象はまさにそれを象徴するにあまりあるばかりか、官僚が一体となって現首相に利便を最大限に図っている点て、すこぶる特別なものであろう。専門家によれば、公文書を改竄する行為は公用文書毀棄罪に当たる可能性が高いとのことである。今回は改竄(菅官房長官は「書き換え」と称しているが、これは日本語的に間違いであり、「改竄」が正しい称し方である)を指示したと言われる佐川宜寿理財局長とその関係者への捜査が必要となる。そして、安倍首相は辞任しなければならないレヴェルの問題であることは言うまでも無いだろう。ましてや、私自身が関わっていたならば首相を辞任すると、以前国会と強気で答弁していたくらいなのだから。

 戦後、日本は民主主義を目指して政治が行われてきた。それは未だ未達成であるが、市民、政治家、法律家らが努力してきた歴史には重みがある。それをこの数年で一度に破壊しようとしているのが現政権である。公文書の隠蔽や改竄というのは特に悪質である。今朝の東京新聞で米国の公文書管理に詳しい国際ジャーナリストの春名幹男氏は、「米国など欧米では、自らやってきたことをきちんと仕事をしてきた証拠として公文書を残すという意識が強い。対して日本は『水に流す』という発想から、ややこしいこと不都合なことがあったら書き換えたり、廃棄してしまおうという意識が強い」と話している。加えて春名氏によれば、米国は、保存する大日本帝国とナチス・ドイツの戦争犯罪関連の公文書を公開しているが、ナチスの文書が800万ページなのに対し日本はたったの20万ページだという。「40分の1なのは日本が敗戦直後に膨大な公文書を焼却してしまったから。こうした政府や官僚の姿勢は、戦後も引き継がれている」。日本が敗戦直後に膨大な公文書を必死になって焼却した事実は知ってはいたが、ドイツと比べてそれほどまでに僅かになってしまっていたことには驚きの念を覚える。日本には想像以上に隠蔽文化があるのだ。民族性や国民性に優劣をつけるのはタブーとされている。しかし、日本人、とりわけ権力の座に就いた人物には忘却、隠蔽、改竄など何とも思わない民族性あるいは国民性があるようであり、そのことをはっきりと指摘する人間が居て然るべきであると考える。私は3.11直後、日本政府は放射能拡散に関する情報を隠蔽するだろうとすぐに予想したが、それはまさにその通りとなった。正しい放射能拡散情報を調べるのにスイスやドイツ、台湾のウェブサイトに頼らざるを得なかったことを、昨日のことのように思い出す。日本の権力者の民族性、国民性は悲しいかな、明らかに欧米や台湾、韓国等と比べて劣っている。それを糾弾し、是正していかなくてはならないのは、当の選挙民である。こんな民族性、国民性があるとはいえ、野党、とりわけ共産党と立憲民主党は自民党に対して徹底した追及の構えを見せている。次回の国政選挙において自民党に票を投じることは、もはや日本における民主主義確立に向けての努力を完全に殺し、真の独裁政治の登場を喜んで促すのも同然である。民主主義の無い自由主義産業国という世界で唯一の例外的な国家から真の先進国へと進歩し、国民があまねく幸福を享受出来るようになる為に、よくよく投票先を考えなければならない。

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