コロナによる中止公演を補償しない日本政府


 コロナウィルスの感染拡大により、今月初めより各種の舞台公演が中止あるいは延期となる例が相次いでいる。特に、政府による「自粛要請」が発表されて以降、その傾向は強まっている。その一方で、大規模公演であっても中止に伴う多額の損失を恐れ、開催されるケースもある。しかし、公演主催者を自粛に従わないとして非難することは的外れであろう。最善策は、政府が自粛要請ではなく中止命令を出したうえで、中止公演に対して金銭的補償を行うことである。ドイツ、フランス、イタリア、台湾、韓国、中国等と異なり、芸術文化国では無いと思われている日本であるが(今列記した国々のうち、東アジア諸国について違和感を持つかたは、これらの国の芸術文化政策について調べられると良いだろう)、舞台芸術公演は実に盛んに行われている。特に東京で一晩のうちに開催されるあらゆるジャンルの舞台芸術公演の総数は、恐らく世界一ではないだろうか。これらの公演に金銭的補償が行われるのであれば、大抵の主催者は中止をするのではないか。特にパンデミックが顕著となり、入国規制前の駆け込み帰国が始まってもいる今週以降は、主催者が公演を開催したが為に感染者を出したりしてしまったら、社会的非難は避けられないだろう。


 ところで現状で公演を自粛した場合、経済的損失は当然のことながら主催者のみならず出演者にも発生する。芸術文化に携わる表現者は基本的にフリーランサーである為(安倍首相はフリーランスという語彙をご存知なかったが)、死活問題に直結する。前述した芸術文化国のうち、ドイツ、フランス、そしてイギリスでは、こうしたことに鑑み、今回のコロナウィルス感染拡大を機に全ての芸術家に補助金を出すことを決定した。日本でもこうした救済策をすべきであると思うが、芸術文化におよそ関心を持たぬ安倍政権にはこうした発想を持つこと自体が不可能だろう。われわれ、大学や企業等、組織に所属しないインディペンデントなアーティストは、その足元の脆弱さに特に不安な思いを抱き、日本政府を軽蔑している。現下の政府の姿勢は、無所属芸術家が安倍政権を支持することに論理的破綻が起きていることを示す好個の例の一つである。


 私自身も今月は作品発表と演奏本番の合計6本が全て中止あるいは延期となった。いつになるとも知れぬコロナ収束後の仕事再開に向け、レッスン仕事以外は地下で生活を送るしか無さそうだ。

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