この度、筆者にとって7冊目の著書となる書籍、『池田一地球環境アートシリーズNo.1 日本のアート文化の〈今〉を撃つ!』(TPAF刊)が出版された。
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執筆者は、水をテーマに環境と向き合うアース・アートを展開する世界的なアーティスト、池田一と、小森俊明(作曲家/編曲家/ピアニスト)、そして監修者は、タージ・マハル旅行団の流れを汲み、筆者も所属する即興演奏集団、「空観無為」のメンバーである河合孝治(サウンド・アーティスト/仏教美学者/著述家)である。本書では、現代アートの文脈には収まりきらない、地球規模の環境アートを展開されている池田さんの主要プロジェクトを、ご本人による素描、私による読解、2人による対談という3段で構成しており、これらを通読することにより、イケダ・アートの拡がりの様相が立体的に浮かび上がって来る仕立てとなっている。
これまでに池田一氏とは舞台公演の形でコラボレーションを重ねて来たが、共同執筆は初めてである。池田氏の仕事については、氏が水をテーマとした大規模なアース・アート作品を手掛けるようになった1980年代後半以降、さまざまな批評家や研究者が分析を行い、書籍や雑誌で発表がなされて来た。しかし、本書のように、美術の領域以外で活動する人間が同様のことを行うことは無かった。今回の執筆・刊行の契機は、私が試みた池田作品の読解が単に分析や批評に留まらず、表現者の現場感覚に基いた内容となっていることを、池田さんご本人が高く評価して下さったことによる。そして、どの章あるいは節をお読みいただいても、その切り口はアートと環境のみならず、社会、政治、経済、建築、都市、音楽と越境して展開されており、イケダ・アートがアートに限定されないことの必然性を理解していただけると確信している。
先述した通り、今回、美術家ではなく、あくまで音楽家である私が執筆者としてご指名を受けたことを誇らしく、また光栄に思うと同時に、その意義を噛み締めているところである。それと同時に、今まで音楽とアートに限定されない、さまざまな領域の渉猟とそれに基く思考を継続して来たこと、アート、音楽、政治・経済の領域における既成の権威主義への異議申し立てを継続して来たことの成果の、一里塚を示せたのではないかとも考えている。共著者の池田一さん、監修者の河合孝治さんに感謝申し上げる。そして、アートや環境に少しでも関心をお持ちのかた、アーティスト、現代音楽の作曲家といったかたがたに、是非お読みいただけたらと思う次第である。
追記(2023年10月17日)
監修者の河合孝治氏から、「池田一さんの地球環境アートという広大なプロジェクトの思想と実践、そこから浮かび上がってくる日本の芸術シーンの問題点を、池田さんと真正面から対談できる音楽家は、小森さん以外いないでしょう」という文章を、そして、共著者の池田一氏から、「こんな突拍子もない、多分例のないアートプロジェクトを実現出来た背景を果敢に解明してくれたのが、作曲家・ピアニストで論客でもある小森俊明であった。表現現場に生きる当事者同士ががっぷり向き合うと、『日本のアート文化の今』が実にリアルに紐解かれていった」という文章をそれぞれいただいたので、ここに追記しておきたい。