政権が駆使する「強さ」の矛先

 前回のブログで、ANAインターコンチネンタルホテルが安倍首相の答弁を否定する回答を行ったことと、その歴史的意義について言及した。しかし、早くもその翌日に政権が同ホテルに圧力をかけた為に、この件について同ホテルが沈黙するに至ったことが報道された。この強権ぶりと恫喝の早さには驚愕するばかりである。それでは、この「強さ」は2月に入って拡大した新型コロナ・ウィルスの対策を例に取ると、どのように発揮されたのか、あるいは発揮されなかったのか・・それは報道の通りである。ダイヤモンド・プリンセスの香港人下船客のウィルス感染が発覚し、船内感染が始まった当初、他の全ての船客の下船を禁じて隔離したこと自体は良かった。しかし、感染症学のプロ中のプロである岩田健太郎神戸大学教授が日英両言語によりYouTubeで発信した情報通り、船内でのゾーニングは行われず感染者と非感染者の通行範囲が入り交っていたうえに、検疫従事者のマスク着用や保護服処分の仕方が杜撰である等の不手際により、船内感染を拡大してしまった。船内検疫を指揮していたのは厚生労働省の役人、つまり感染症の素人であり、プロが感染を抑制する為の具体的かつ実効的な手段を講じることが出来ない状態であった。船内におけるゾーニング等をはじめとする感染防止策を迅速に実行可能な体制を早期に構想し、実現する「強さ」が政権には無かったということである。あまつさえ、陰性船客の検査を行わないまま下船させ、公共交通機関を利用させてしまった。結果、下船した陰性船客の一人の感染が早くも発見されてしまった始末である。本来必要な検査の完全な実施と専用バスでの移動を命令出来なかった政権の「強さ」欠如の結果であろう。感染しても後は野となれ山となれ、ということか。

 本来必要な「強さ」を発揮しなければならない対象、事案に対してはそれを行わず、自分たちの既得権益を死守したい領域に対してはそれを行い、恫喝する。この政権の身勝手さと政権担当能力の無さをこの数日間で嫌というほど実感している。

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