「平和に向けてのサウンド駅伝Vol.3」開催にあたって
4月に「平和に向けてのサウンド駅伝」を初めて開催し、その小規模版としての第2弾を5月に開催した。今回の企画はそれに続くものである。ロシアによるウクライナ攻撃、イスラエルによるガザ攻撃等、アメリカによるヴェネズエラとイランへの攻撃と、ポスト・コロナウィルス・ピリオドだけ見てもこれだけの攻撃が行われている。多くの場合、大規模攻撃イコール戦争の端緒なのであり、周知の通り、ヴェネズエラ攻撃を除けば何れも明確に戦争へと発展しているのである。しかもこれらは日本にとって対岸の火事ではない。高市は防衛費増額、防衛装備移転三原則改悪を土台とした武器輸出拡大、憲法改正の推進、自衛隊の国防軍化、台湾有事発言、国家情報局設置の推進と、戦争準備に余念がない。そしてほら、この文章を書いている6月26日には国旗損壊罪法案も可決されてしまったではないか。この一連の流れを見るに、101年前に治安維持法が制定された後の戦争続発を嫌でも想起させ、ぞっとせざるを得ない。何しろ1931年に満州事変が、その6年後に日中戦争が、続けてその4年後にアジア太平洋戦争が引き起こされ、最終的にその4年後の1945年に敗戦しているのである。
さて、芸術家の役割は単に芸術を表現するのみで事足れりとして良いのだろうか?何も、一人の芸術家がその全表現を政治や社会への批判、なかんずく、その当然の帰結としての反戦平和の訴求のみに費す必要があると主張したいのではない。しかし、このうわべだけの民主主義先進国で暗黙の裡に継続されてきた政治批判/社会批判の忌避を、これからは漸次的に覆そうではないか、ということなのだ。この忌避は言わば習慣として継続されてきた、つまり、これは思考停止と呼び変えても良い仕草なのだ。そう仮定し得るに足る根拠としての歴史的事実が、あの15年戦争における大日本帝国臣民の熱狂だったのはないかと考える。軍国主義者への異議申し立てゆえにとりわけ大規模化した、さる沖縄全戦没者追悼式での高市への野次は今始まったことではなく、一般市民が採り得る反戦平和への反復的かつ継続的な意思表示の一つである。ほとんどの市民が持っているに違いない平和への思いというのは、世界中で新しい出来事が継起し、情報の洪水が毎日更新され続けていくなかで意識的に想起せねば埋没しかねないものであるがゆえに、反復的かつ継続的な意思表示が欠かせないのである。
本公演では、さまざまな発音機構による楽器およびヴォーカルを担う音楽家12人による演奏と、企画提唱者であるアース・アーティストの池田一氏による水を用いたパフォーマンスが交差し合い、平和への思いをそれぞれの仕方で奏で合う。水とはその向き合い方次第で人間を生かしもすれば殺しもする物質であり、不定形にして融通無碍な存在である。つまり、戦争と平和の間で揺れ動く人間にとって、生存に向かう水への対し方が平和の構築のメタファーとして機能し得ると理解することが可能である。本公演において池田一氏のウォーター・パフォーマンスは、さまざまな文化が交流する場としての「水辺」と、音が集まり再出発する「音駅」(同氏による造語)という2つの概念を併せ持った場を表出する。以上が本公演における水の機能であるが、一方で音楽自体が持つその不定形性と流動性がもたらす希望については、言うまでもないだろう。今回も第1回目と同様に多くの音楽家が、お声掛け後すぐに賛同して集まって下さった。深く感謝する次第である。われわれが持つ平和への強い意思の共有が、おいで下さるみなさんに確実に伝わらんことを切に願っている。
(小森俊明)
=公演概要=
開催日時:2026年7月23日(木)17:30開場、18:00開演、19:30頃終演(予定)
開催場所:なかのZERO視聴覚ホール
入場料:2000円
企画提唱:池田一
主催:小森俊明
協力:河合孝治
後援:Chap Chap Records、芸術メディア研究会
=出演者(五十音順)=
アース・アーティスト
⚫︎池田一(いけだ・いち)/パフォーマンス
音楽家
⚫︎Akaciq(あかしっく)/アラビック・パーカッション
⚫︎香村かをり(こうむら・かおり)/コリアン・パーカッション
⚫︎河合孝治(かわい・こうじ)/エレクトロニクス
⚫︎北沢直子(きたざわ・なおこ)/フルート
⚫︎小森俊明(こもり・としあき)/ピアノ
⚫︎棚谷ミカ(たなや・みか)/パーカッション
⚫︎玉響海月(たまゆら・くらげ)/ノイズ、パーカッション
⚫︎玉響海星(たまゆら・ひとで)/琵琶、ヴォイス
⚫︎波田生(はた・いく)/ヴィオラ
⚫︎牧野克彦/ハーディ・ガーディ、シンセサイザー
⚫︎丸田美紀(まるた・みき)/箏
⚫︎望月太喜之丞(もちづき・たきのじょう)/鼓
なかのZEROへのアクセス
https://www.nicesacademia.jp/zero/access/
東京創造芸術祭
https://www.tokyopaf.com/”