3.11原発震災から9年が経つ。福島県では原発が立地する浜通り地方のみならず、県全域で太陽光、地熱をはじめとするさまざまな再生エネルギーによる発電へのシフトが確実に進んでいる。東京電力が起こした原発事故の当該地域なのであるから当然のシフトであるとは言え、大きな前進ではある。それとは対照的に福島第一原発敷地内では今も汚染水と汚染土が増え続けている。そして、40年で終わると見通された廃炉は、もっとずっと先になるのは確実である。いったん事故が起きれば制御棒や使用済み核燃料を抜き取るだけでも、人類が今までに経験したことの無い難度に直面するのであるし、廃炉までにかかる時間と予算は膨大となる。これらのことを誰もが知るところとなって久しい。それでもなおかつ、原子力規制委員会とは名ばかりの原子力ムラ出身者で構成された組織が、全国の原発に再稼働のお墨付きを次々と与えている。3.11以後、あけすけに再稼働を開始した原発は、原発事故の現場である福島や電力の大消費地で首都である東京から遠く離れた、九州や四国、若狭地方に立地している。具体的には川内原発、伊方原発、高浜原発等である。しかし、3.11から9年経った今では、原子力ムラの構成員たちは、東京から100キロ圏にあり、30キロ圏内に100万人の人々が居住する東海第二原発すら再稼働させようとするまでに増長している。3.11後にブログやツイッターでも指摘したように、東海第二原発にはあと少しでメルト・ダウンが起こる可能性があった。東日本大震災級の大地震と大津波が再び太平洋岸を襲うことは、遅かれ早かれ確実である。その時のことを考慮しないで東海第二原発を再稼働することは科学的にも人道的にもあり得ないことであり、地元で再稼働に慎重な声が出ているのは当然のことである。
3.11の後、ドイツ、スイス、台湾はすぐに脱原発に政策転換を図った。そして、国内で全く原発が稼働していなくとも電力供給には何の問題が無いことがすぐに知れ渡り、原発必要論を説く原子力ムラの欺瞞と一部の一般国民の無知蒙昧ぶりは、脱原発主義の人々にはとりわけ鮮やかに白日の下に晒されることとなった。しかも3.11後の数年間で再生エネルギーの開発が迅速に進み、日本国内ですらより一層、原発に依存しなくても問題の無い社会が出来上がっている。それにも関わらず、3.11以後のほとんどの期間を占めることとなった自民党安倍政権と経団連、電力会社(特に東電以外)を中核とする原子力ムラによって、民主党野田政権(2030年までに国内原発全廃炉と宣言した)とは比べものにならないほど原発推進の度を強めている。しかし世界を見れば、今や上記3ヶ国どころかほとんどの産業国(先進国とは限らない)が再生エネルギーの開発と原発からそれらへのシフトに舵を切っており、原発依存を深めようとしている産業国は日本とロシアだけという状態である。どちらも、大規模な原発事故を起こした当事者国であるというのは偶然だろうか(ただし、ロシアは当時旧ソ連。そして、チェルノブイリ原発事故は、福島原発事故とは異なり、営業運転中に引き起こされたものでは無かった点と、社会的悪影響の程度という点で福島原発事故よりだいぶましであった)。
市民は、脱原発の意志表示を止める訳にはいかない。